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逆有償とは

一般的に産業廃棄物を処理すると言えば、排出事業者が自ら処理するのでなければ、許可をもった処理業者に委託し処理費用を支払い処理をします。

一方で、産業廃棄物を再生利用したり、エネルギー源として使用する業者に排出事業者の出す排出物を原材料・原燃料として有償で売却するという処理の流れもあります。

産業廃棄物としてお金を払って委託し処理していたものが、お金を払うどころかもらった上で引き取ってくれるので、排出事業者に取ってみたらこんなに喜ばしいものはありません。

この場合において、排出事業者自らがその排出物の売却先業者までの運搬費用を負担しなければならない場合があります。

この時に、運搬費用が売却益を上回り(運搬費用-売却益≧0)、結果として、売却してもマイナスか0円で手元に1円も残らないという場合を「逆有償」(手元マイナス)と言います。

※「逆有償」は、前述のようにマテリアルリサイクルまたはサーマルリサイクルを目的に排出物を購入する業者に対しての限定した話しですので、そこは間違いないようにしてください。

売却益が出るから廃棄物でないと思うと危険

一般的に、排出事業者に売却益が出る場合はその排出物は「有価物」とされることが多く、逆有償の場合(手元マイナス)になるとその排出物は「廃棄物」とされることが多いです。

ここで、売却益が出るということは、廃棄物でなく、「有価物」一択で間違い無いのではと思われた方もいらっしゃるかと思いますが、実はそのように言い切れません。

「取引価値の有無」は有価物か廃棄物かの判断基準の一つにすぎない

有価物か廃棄物かの判断をする判断基準は、現在は総合判断説という考えが採用されています。

廃棄物かどうかは、総合判断説で①物の性状、②排出の状況、③通常の取扱い形態、④取引価値の有無、⑤占有者の意思  等を総合的に勘案して判断しなければならないとしています。そして、廃棄物でなければ、有価物となります。

この説に従えば、「取引価値の有無」は有価物か廃棄物かの5つの判断基準の一つにすぎません。

したがって、売却益が出る(取引価値の有り)=「有価物」、逆有償(全体としてみたら取引価値の無し)=「廃棄物」と両方ともに言い切ることできません。

実際には、逆有償の場合は売却益がでていますが、その場合でも売却する排出物が廃棄物かどうか、つまりは廃棄物処理法を適用するかは、5つの判断基準を総合的に勘案して判断するということになります。

少し考えてみても、運搬費用も含めて全体として経済的にマイナスであれば、マイナスとなる原因の運搬を脱法行為などして浮かせてしまおうと考える人物がいないのが一番と思いますが、そのような人物がでてきてしまうのが現状だと思います。

それゆえに、廃棄物処理法を適用し、適切な処理をさせるようにしていると思われます。

逆有償の場合に生じるリスク

廃棄物と判断されれば、廃棄物処理法を適用される

前述のように、逆有償の場合(手元マイナス)では「廃棄物」とされることが多いです。

逆有償の場合でも売却する排出物が廃棄物と判断されれば、廃棄物処理法を適用されます。その場合、運搬業者は産業廃棄物収集運搬業許可が必要となります。

理解が足りず、売却益がでているので有価物だと早とちりしてしまい、『収集運搬させるのに許可いらないぞ』と思い、無許可業者に委託して運搬させてしまう可能性があります。

そうなると、排出事業者は委託基準違反、運搬業者は受託禁止違反となってしまいます。

この違反は、廃棄物処理法の中で一番重い罰則、5年以下の懲役又は1000万以下の罰金となるのでそれほど大きなリスクを秘めていることになります。

知らぬ間に「逆有償」になる場合も

また、市況の変動で知らぬ間に「逆有償」になってしまいます。例えば、石油価格が高騰し、運搬費用が増えてしまったケースで、特に、排出物の売却代金が低い場合などは要注意です。

その場合には、ちょっと前までは、逆有償でなかったものが逆有償となります。

逆有償の場合(手元マイナス)では「廃棄物」とされることが多いので、この状態で無許可業者に収集運搬を委託してしまうと、委託基準違反となる可能性があるとともに、同様に、運搬業者は受託禁止違反となります。

こちらも上記と同様の重い罰則となります。

自治体によって、廃棄物とされるかの判断は違うので、担当自治体に確認することが確実です。こうしたリスクに対しては、日頃より関係者間で逆有償、それに伴うリスクに関する知識・情報を共有しておくことが重要です。
 
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逆有償の時に廃棄物処理法が適用される場合にするべきこと

ここまでの話しも踏まえて、逆有償の場合で廃棄物処理法が適用されるとしたら何をすれば良いかをまとめまておきます。

排出事業者が自分で排出した産業廃棄物を適正に処理する責任が求められているという点は変わりないので、少し異なる所もありますが、普段の産業廃棄物の処理と根本は同じです。

①運搬業者と産業廃棄物収集運搬委託契約の締結をしておく

②上記の委託先運搬業者は産業廃棄物収集運搬業の許可が必要

③排出物の売却先企業の産業廃棄物処理業の許可は不要

④委託先運搬業者のマニフェストの運用は、A・B1・B2票までで良い


※一般に、排出事業者が、排出物を有価で売却して引き渡した時点で廃棄物でなく、有価物です。運搬費用が売却益を超え、経済的損失が生じている「逆有償」のケースでも、基本的に、引き渡し後にその排出物が確実に有用に活用されれば、廃棄物としての不適切処理のリスクはほぼなくなるので、廃棄物でなく「有価物」として扱われます。

つまり、③④について、売却先企業の手元に来た時から「有価物」として扱われるわけなので、その時点から排出事業者は適正に処理する責任はなくなります。

したがって、売却先企業の産業廃棄物処理業の許可は求められませんし、マニフェストの運用も収集運搬の終了時点のB2票まで良いことになります。

運送業違反にも注意

「逆有償」の逆パターン、売却益が運搬費用を上回る(運搬費用-売却益<0)という場合も同様に注意すべきです。

ここまでの話しでわかるように、基本的に、排出事業者に排出物の売却によって全体として経済的プラスももたらす場合は、当該排出物が「有価物」とされることが多いです。ここでは、有価物として考えていきます。

有価物の運搬には運送業許可が必要

基本的に、収集運搬業許可は廃棄物の収集と運搬がセットになっているので、運送業許可なしで廃棄物の運搬ができます。

これは、逆に言えば、収集をしないような運搬や有価物の運搬を業とするのであれば、運送業許可が必要ということになります。

しかし、このケースでは、廃棄物処理の流れの中で当該排出物が有価物として取引されているので、勘違いして運送業許可なしで産業廃棄物収集運搬業許可に基いて運搬してしまう可能性があります。

残念ながら、この場合、運送業法違反になってしまいます。

「産業廃棄物」か「有価物」かの判断は重要

このように、再生利用したり、エネルギー源として使用する業者に排出物を売却する場合においても、「有価物」として扱われる場合と「廃棄物」として扱われる場合があり、それぞれで運搬に必要な許可が異なります。

そして、この場合、「産業廃棄物」か「有価物」かという判断はとても複雑です。

間違えてしまわぬように「有価物」か「廃棄物」の判断があいまいな場合は、該当の自治体に確認するなどして確実にしてください。その上で、運送業許可が必要かの確認を怠らないことが重要です。

 

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