産業廃棄物の自社運搬というと、その言葉の通りで「自社で産業廃棄物を運搬すること」です。

自社運搬には、そのメリットもありますが、注意しておかなければ、廃棄物処理法違反になってしまうような「守るべき基準」も存在します。

ここでは、自社運搬でも守るべき基準を中心に解説します。

なお、それらの基準を守らなかった場合の「自社運搬」に関わる罰則についてはこちらの記事をご覧ください。 

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自社運搬は許可不要 マニフェストが不要の場合も

排出事業者が産業廃棄物の収集運搬を業者に委託する場合、収集運搬業許可をもった業者への委託義務やマニフェストの交付義務などがあります。

しかし、排出事業者が産業廃棄物を自社運搬(自ら運搬とも言います)をする場合では、収集運搬業許可は不要になりますし、加えて自ら処分もすればマニフェストも不要となります。

自社運搬でも規制がある

収集運搬業許可もマニフェストも不要と言う部分だけを聞くと、自社運搬する場合においては何の規制なく自由に運搬できるのかと思われた方も、もしかしたらおられるのかもしれません。

しかし、残念ながら自社運搬であっても、規制はしっかりあります。

廃棄物処理法は、排出事業者に排出した産業廃棄物の適正処理を義務付けています。
この適正処理の「処理」という言葉は、産業廃棄物の「処分」というだけでなく、「収集運搬」も含みます。

そして、この「処理」のうちの産業廃棄物の収集運搬ですが、排出事業者に産業廃棄物の適正処理義務がある以上、他人に委託する場合だけでなく、自ら運搬する場合でも適正処理つまり、適正な収集運搬をしなければならないことになります。

自社で産業廃棄物を収集運搬する場合でも適正処理したと言えなければなりません。そのために、自社運搬でも守らなくてはならない基準があります。

これをしっかり守っていれば、適正処理をしたと言え、自社運搬をしていると胸を張って言えます。

自社運搬においても守るべき基準 

収集運搬を行う場合に関する基準

(1)飛散、流出しないようにすること
(2)悪臭、騒音又は振動による生活環境の保全上支障が生じないように必要な措置を講ずること
(3)収集又は運搬のための施設には、生活環境の保全上支障を生ずるおそれのないように必要な措置を講ずること
(4)運搬車、運搬容器及び運搬用パイプラインは、飛散、流出、悪臭の漏れがないものであること

 

これらは簡単に言えば、産業廃棄物を収集運搬する場合は、運搬車両・運搬容器・運搬方法等を生活環境の保全上支障を生じないように必要な措置を講じてくださいという基準になります。

基準という大それた言い方をしていますが、例えば、木くず、繊維、ゴムなどの固形状のものは、シートを上からかけて飛ばないようにする、漏洩しうる汚泥は密閉したドラム缶で入れるなど、こうした当たり前のことをちゃんとして収集運搬できていれば何の問題ありません。

運搬車両の表示等に関する基準

運搬車両の場合には、「産業廃棄物の収集又は運搬の用に供する運搬車である旨その他の事項」を見やすいように表示し、かつ、必要な書面を備え付けておくこと。

 

つまり、運搬車両には、①産業廃棄物収集運搬の用に供する旨その他の事項に関する「車両の表示」と②必要な「書面の携帯」が表示等に関する基準として定められています。

①車両の表示

「産業廃棄物収集運搬の用に供する旨その他の事項」の車両表示とは、「産業廃棄物収集運搬車である旨」と「運搬する者の名称(会社名)」の2つを車両の両側面にわかりやすく表示する義務です。


以下が表示例です。

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※なお、上記の表示例の許可番号は、自社運搬において不要です。

「産業廃棄物運搬収集車両である旨
略称や文言に気をつける

原則は、「産業廃棄物収集運搬車」と表示するようにしてください。
※「産廃」と略すことができるのは面積上やむを得ない場合のみです。
なお、「収集運搬」の部分に「処理」や「回収」という文言を使うのは意味が変わってしまうのでやめておきましょう。

文字の大きさ

「産業廃棄物収集運搬車」という表示は、1文字の大きさはそれぞれ5cm角以上と規定されています。その大きさでの表示をしてください。

文字の向き

縦書き横書きどちらでも問題ありません。

「運搬する者の名称(会社名)」
略称でもいい

自社運搬の場合は排出事業者名になります。「◯◯株式会社」という表示で構いません。

こちらは、産業廃棄物収集運搬車両である旨の場合と異なり、㈱や㈲という略称で構いません。

また、社会的認知度が高い略称であれば認められます。

但し、読みにくい字体や英語表記はしないようにしましょう。

文字の大きさ

1字の大きさが3cm角以上と規定されています。その大きさでの表示をしてください。

文字の向き

縦書き横書きどちらでも問題ありません。

マグネットシート貼り付けで対応可能
運搬時のみの張り付けで良い

車体に直接印字しなくとも、運搬時のみ表示できればよいので印字されたマグネットシートを運搬時にだけ張り付けるという対応でも良いです。

 見やすく鮮明な文字色を選択

また、文字色は指定はないですが、見やすく鮮明な文字でなければなりません。車体の色に対して文字が鮮明になる色を選択します。

マグネットシートであれば、白地に黒文字が一般的で、それを選択していれば何も問題ありません。

 
 
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②書面の携帯

自社運搬とはいっても、運搬した産業廃棄物を自ら処分する場合(自社処分)と他人に委託して処分する場合があります。

この「書面の携帯」に関して、自分で処分するか他の人に処分してもらうかでマニフェストが必要かどうかに違いが出てきます。

自社運搬で自社の処分場等に運搬する場合(自社処分)

自社の処分場等に運搬する場合は、法定記載事項である産業廃棄物情報を記した書面を携帯しなければなりません。この場合は、自社ですべて「処理」することになるので、原則、マニフェストは不要になります。

書面の5つの記載事項

その書面の記載事項は次の5つです。

排出者の氏名及び住所
運搬する産業廃棄物の種類及び数量
産業廃棄物を積載した日
排出事業場の名称、所在地及び連絡先
運搬先の名称、所在地及び連絡先

 

以上の5つの事項確実に記載された書面をバインダーに挟む形などでも構いませんので携帯してください。

マニフェストで代用できる

上記の記載事項は、マニフェストの記載事項にも存在するものです。よって、マニフェストは法定記載事項を記した書類の代わりに携帯すること代用できます。

携帯で確認できる場合は不要

また、携帯電話などで常に上記の法定記載事項が確認できる場合も、書面の携帯は不要です。

自社運搬で他社の処分場等に運搬する場合(他社処分)

自社運搬は産業廃棄物収集運搬業許可が不要です。しかし、自社で産業廃棄物を処分せず、他社の処分場に運搬する場合は、マニフェストが必要となります。

自社運搬で他社処分の場合のマニフェスト運用方法

それでは、自社運搬で他社処分の場合のマニフェストの運用方法は、他社に収集運搬を委託する場合とどう違うのかと思われた方もいるかと思いますので、そのことについて説明していきます。


自社運搬ですので、マニフェストの「運搬を受託した者の氏名又は名称及び住所」欄については「自社運搬」と記入するか、斜線等を引いておくかのどちらかで構いません。ただ、「自社運搬」と書いておいたほうがわかりやすいかと思います。

また、マニフェストは、B1、B2票は切り取ってから交付してください。

そして、備考欄にも「自社運搬」のほか「処分のみ委託」などと記入し、委託関係をわかりやすくしておきます。

中間処分完了後に、処分業者からD票とともにC2票も返送されてきます。C2票は運搬を委託する際に収集運搬業者が保管するものです。自社運搬の場合は自社で保管しておきましょう。

以上の点が、自社運搬で他社処分の場合と他社に収集運搬を委託する場合においてのマニフェストの運用方法の違いとなります。

石綿含有産業廃棄物に関する個別基準

石綿含有産業廃棄物の収集運搬を行う場合には、石綿含有産業廃棄物が、破砕することのないような方法により、かつその他の物と混合するおそれのないように他の物と区分すること。

 

このような基準があります。石綿含有産業廃棄物の場合には、自社運搬する際にも同様にこの基準を守る運搬をしなくてはなりません。

例えば、ダンプでがれきを運搬する場合に、石綿含有であればフレコンバックに入れて飛散しないように、混ざらないように区分するなどします。その状態で最終処分場まで運ぶことになります。

特別管理産業廃棄物を自社運搬する場合は義務が追加

なお、特別管理産業廃棄物を自ら運搬又は処分する場合は、「帳簿の記載とその保管」がこれまでのものに追加して義務付けられます。このようなケースは滅多にないかと思いますが、忘れないようにしましょう。

 

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