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「禁固以上の刑」に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

「禁固以上の刑」とは

「禁固以上の刑」と言われても、一体どの刑がそれに当たるのか、この場で頭に浮かばれた方は少ないかと思います。まず、その点につき説明します。

日本の刑罰は、刑の重さの順に並べると「死刑、懲役、禁固、罰金、拘留、科料」となります。

したがって、禁固以上の刑というのは、文言上は「死刑、懲役、禁固」になります。

「その執行を終わった日から5年」とは

「その執行を終わり」とは

「その執行を終わり」とは、禁錮以上の刑の執行を終えた、言い換えれば、刑務所で刑期を終え出所したということです。

つまり、刑務所の出所は、満期出所(釈放)と仮釈放の二種類がありますが、この場合の出所は満期出所(釈放)のみの話しになります。

結論としては、仮釈放の日ではなく満期出所で出所した日から5年を経過していない場合、欠格要件に該当することになります。

原則としての「職業制限」と「復権」

一般的には、この「禁錮以上の刑に処せられた者」ものについては、弁護士、税理士、公務員、警備員等の一部の資格が必要な職業に従事できなくなります。

また、原則として、職業従事への制限が解除され、法的に元の一般人の状態に戻る(「復権」と言います)には、刑期満了後10年以上経過し、刑の言渡しの効力が消滅しなければなりません。

※罰金刑でなく、禁錮以上の実刑判決を受けて服役し、刑期満了後10年経過で戸籍を管理する市区町村にある「犯罪人名簿」から抹消されます。(前科が消える、いわゆる刑の言渡しの効力が消滅する(刑罰の効力は失くなる)「刑の消滅」という規定)

※ちなみに、罰金以下の刑(罰金・拘留・科料)の場合は、刑の執行を終わり、またはその執行の免除を得てから、5年経過で戸籍を管理する市区町村にある「犯罪人名簿」から抹消されます。

温情的に緩和された規定

しかし、今回の5年という許可制限は上記の10年の半分ですので、前科が消えておらず、犯罪人名簿から抹消はされていません。

5年経過でも産業廃棄物処理業にかかる許可の制限を解除してくれる温情的に緩和された規定ともいえるわけです。

また、これは「破産者で復権を得ないもの」については廃棄物関連の職業への従事に制限されているのと同様の職業従事制限が「禁固以上の刑に処せられた者」についてもあるということもいえます。

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「執行を受けることがなくなった日」とは

刑の時効完成、恩赦による刑の免除、仮釈放後の残りの刑期満了

刑の「執行を受けることがなくなった日」というのは、具体的には、刑の時効完成、恩赦による刑の免除、仮釈放後の残りの刑期満了した日などのことです。(つまり、「執行免除」のこと)

刑の時効完成した日、恩赦による刑の免除された日から5年を経過していない場合、欠格要件に該当します。

その他、仮釈放の話しですが、仮釈放とはまだ刑期が満了していないが、刑期満了までの間を仮に釈放されることです。

この仮釈放中に犯罪をしてしまうと、仮釈放が取り消されて、刑期満了までの日数を改めて受刑しなくてはならないというものです。

仮釈放の場合も、刑期満了の日から5年を経過していない場合、欠格要件に該当します。

したがって、新規申請をしようという場合は、これらの事項に該当するものがあるというのであれば、5年間経過しているかはよく確認しましょう。

執行猶予付きの場合は該当するのか

禁固以上の刑が「執行猶予付きの場合」に、執行猶予期間(最長5年)を無事に満了した場合は、この「執行を受けることがなくなった日」にあたるでしょうか?

「執行猶予期間中」は、執行猶予が付いたとしても、実際に刑の言渡しを受け、有罪判決を受けているので当該欠格要件の対象になり許可の取得・保持が制限されます。

しかし、執行猶予を取り消されずに執行猶予期間を無事に満了すれば、刑の言渡しによる効果がなくなり(前述の「刑の消滅」)、その日以降(将来に渡り)は禁固以上の刑に処せられた者でなくなるため、当該欠格要件による許可制限はなくなり、法的に元の一般人の状態に戻ります。(前述の「復権」)

結論から言うと、執行猶予期間の満了は「執行を受けることがなくなった日」に含まれないので、その日から5年を経過することなく、執行猶予期間が満了したその日から欠格要件の対象から外れ、新規申請も可能となります。

なお、前述したように、「禁固刑以上の実刑判決」の場合は刑を満了してから5年という一定期間経過しないと欠格要件による制限はなくならず、新規申請できません。

「執行免除」と「執行猶予」の欠格要件の取り扱いが異なる理由

そもそも、執行猶予制度の趣旨とは、刑の時効制度や恩赦制度における刑の執行免除など異なり、「犯罪者の自発的社会復帰を促進」することが一つの目的です。

執行猶予期間を問題を起こさずに満了した者に対して優遇し上記の目的につなげるものであるので、「執行猶予」と趣旨の異なる「執行免除」をあえて同列にすべきではないと考えられます。

よって、「犯罪者の自発的社会復帰を促進」を前提としない「執行を受けることがなくなった」という言葉には執行猶予は含まれないと考えることができます。


上記の趣旨から「執行猶予」は実際に刑務所で刑の執行を受ける人より優遇されていて、執行猶予期間を問題を起こさずに満了した時点から刑の言渡しの効力が消えます。

そして、将来に渡って前科のない人と扱われ、将来に渡り欠格要件という職業や事業に対する資格制限もなくなります。

猶予期間中に問題起こさなかった人に対して、「また満了日から5年頑張らないと職業も事業もできないままだよ」というような、自発的社会復帰の妨げになってしまうようなことは、その趣旨に反しますので同様にちゃんと区別して他の欠格要件より優遇されているというわけです。

 

 ※なお、執行猶予期間が経過後は前科は消えるという見解が一般的ですが、犯罪事実そのものは消えず、検察庁が管理する犯歴票で犯歴は残り続けます。

何の法律違反であるかは限定されていないことに注意

「禁固以上の刑」には、「罰金」が入っていません。罰金刑までは大丈夫なら楽勝かもしれないと思われた方もおられたかもしれません。

しかし、注意したいのが、この欠格要件は、何の法律違反であるかは限定されていないということです。

ここでは、自動車運転に関わる法律について考えてみます。

「罰金刑」に処せられた場合の欠格要件があります。この「罰金刑」の場合の欠格要件は対象法律が限定的で暴力行為や環境関連の法律の場合にのみの話しとなります。

つまり、自動車運転関連の法律違反で罰金刑を受けたということにとどまる場合には、欠格要件にならず、許可を新規取得できますし、保持しておくことができます。

しかし、運転が悪質になって、危険な運転をして禁固刑以上の刑になってしまうと、自動車運転に関わる法律違反などでも欠格要件になる可能性を秘めています。

したがって、暴力行為や環境系の法律はもちろん、それ以外の法律であっても、法律違反をしないように常より心がけることがこうした欠格要件に該当しないことの第一歩と思うので、十分に注意するようにしてください。

 

 

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