私たちが新しい製品を購入する時に、販売業者が使用済みの古い製品を引き取ってくれることがあります。このような行為が、ご存知の通り「下取り」といいます。

日常的にもよく行われているこの下取りという行為ですが、実は、法律違反にならないで正しい下取りと認めてもらうにはいくつかの条件を満たす必要があり、想像以上に難しいです。

ここでは、この下取り行為について解説していきます。コンプライアンスの面からもご確認にお役立てできればと思います。

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「下取り」の5条件

下取りについての判断は廃棄物処理法に規定されているのではなく、環境省が発出した「通知」によってその判断が示されています。

平成25年3月29日 環廃産発第13032910 号(環境省)
「新しい製品を販売する際に商慣習として同種の製品で使用済みのものを無償で引き取り、収集運搬する下取り行為については、産業廃棄物収集運搬業の許可は不要であること」

 

短い一文ですが、重要なポイントが多く含まれています。

ピックアップして整理すると以下のようになります。

 

「下取り」の5条件

  1. 新しい製品を販売する際
  2. 商習慣として
  3. 同種の製品で使用済み
  4. 無償で引き取る
  5. 事業者自ら(販売事業者)が収集運搬

   1~5を満たすと収集運搬業許可は不要

 

新しい製品の販売事業者が、以上の5つの条件をすべて満足していれば「下取り」と認められます。

古い製品を販売事業者の拠点に持ち帰るのに収集運搬業許可は不要であると示されています。

今度は、この5つの条件について、それぞれ詳細を解説していきます。

各条件の解説

新しい製品を販売する際

「新しい製品を販売する際」とありますが、必ずしも新しい製品の販売と下取りによる引き取りが同時である必要はありません。

社会通念上許容されるくらいの誤差であれば、販売と引き取りの多少タイミングがずれていても構いません。

商慣習として

「商習慣」といえる行為でなければなりません。

注意したいのが、商習慣は製品購入者と販売事業者の双方の合意で成立するものということです。

したがって、販売事業者が下取りを拒否しているような場合や製品購入者が販売事業者に対して使用済み製品を強制的に下取りさせる場合は、商慣習として認められません。

同種の製品で使用済みのもの

「同種」つまり、性状・数量・機能等が著しく異なるような場合は下取りではありません。

逆を言えば、性状・数量・機能等が著しく異なるというものでなければ、他社製品でも認められます。

しかし、「テレビを買うから、代わりに使用済みのテーブルを引き取ってよ」とか「パソコンを1台買うから使用済みのパソコン20台を引き取ってよ」というのは著しく異なるものですので、下取りと認められません。

無償で引き取る

下取りは、「無償」で引き取ることです。これは、よく勘違いしやすい重要ポイントです。

一般に下取りというと、買い替えの際に使用済み製品をいくらかで買い取ってもらうことをイメージしますが、この場合は廃棄物処理法は関係がありません。

販売事業者が処理費用や運送料などお金も直接もらう場合はもちろん、逆に第三者にお金を払って使用済み製品の回収を依頼することは下取りとして認められません。

なお、後者の場合は、この使用済み製品は有価物であり、廃棄物処理法自体も適用されません。

事業者自らが収集運搬

販売事業者自らが使用済み製品を製品購入者の元から自分の店まで収集運搬することが「下取りの条件」です。

販売事業者が委託して使用済み製品を収集運搬させる時は下取りにあたらないのでご注意ください。
 
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条件を満たすと収集運搬業許可は不要

条件を満たすと排出事業者が変わる

使用済みの製品の排出事業者は、購入して所有権を持っている製品購入者です。(使用済みの製品に対し、使用・収益・処分するなど、いわば管理権限を持っています)

この「下取り」は廃棄物処理法の特例です。

「下取りの5条件」を全て満たせば、排出事業者が製品購入者から販売事業者となります。(満たさなければ、排出事業者は製品購入者です)

したがって、条件を満たした場合、排出事業者である販売事業者が下取りし使用済み製品を収集運搬することになり、その行為は「自社運搬」に他なりません。

自社運搬処分の場合、収集運搬業許可は不要となるのに加えて、マニフェスト交付も不要となります。

しかし、自社運搬でも守る基準がありますので十分に注意しておいてください。

下取りの条件を満たさない場合

 販売事業者が委託して使用済み製品を収集運搬させる時、下取りの条件を満たさず、委託先業者は収集運搬業許可が必要になるので注意です。

この場合は、廃棄物処理法の委託基準が適用されるので、当然、マニフェストも必要です。

なお、マニフェスト記入にあたっては、この場合、下取りの条件を満たさないので「排出事業場」は排出事業者である製品購入者の名称・所在地となります。

「運搬先の事業場」は販売事業者の元又は委託した処分業者施設となります。

下取りし、さらに製造事業者等が下取りする場合

下取りとは認められない

これまでの話から、下取りをした製品をさらに卸売業者や製造事業者が下取りするような場合は、排出事業者は卸売業者や製造業者に代わるのかとお考えになられた方もいらっしゃるかと思います。

下取りをした製品をさらに卸売業者や製造事業者が下取り、つまり無償での引き取りをする行為は、「新しい製品を販売する際の」商習慣といえるものではありません。

よって、下取りとは認められません。

販売事業者の排出事業者としての責任

また、これまで述べてきたように、下取した製品について販売事業者が排出事業者となります。いわば、販売事業者が排出した産業廃棄物となります。

これを製造事業者や卸売業者が無償での引き取りをすることは、有価物でないものつまり、廃棄物の処理を委託したことに他なりません。

したがって、この場合、製造事業者や卸売業者が処理業の許可を持っていなければ、基本的には、無償での引き取りはできません。(その他は広域認定や各リサイクル法の個別によらなければなりません)

要は、一度下取りし引き取った製品は、販売事業者は、その排出事業者として産業廃棄物処理法に基いて、最後まで「適切処理」をしなければならない責任があるということです。

 

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