環境省の各都道府県に対する通知による許可事務の取扱をまとめると、産業廃棄物収集運搬業の新規許可取得のために満たすべき要件は下記のものになります。

ここで簡単にですが、許可が取得できるかを以下の「要件チェックリスト」でチェックして見ましょう。

 

【要件チェックリスト】

□「欠格要件」に該当していない。

□「講習会」の受講をし、修了証が手元にある。

□産業廃棄物の性状に応じた適正な処理ができる「車両」「容器」「車庫」が準備できている。

□上記の車両・車庫を「継続的に使用する権限」を有している。

□現在の事業において「過去3年間の損益平均がプラス」(マイナスでも、直前期がプラスなら許可の可能性あり)

□「自己資本比率が10%を超えている」(超えていなくても、債務超過になっていなければ許可の可能性あり)

□個人の場合は「所得税」、法人の場合は「法人税」の未納が過去3年間ない。

□直近の決算で上記の「所得税」「法人税」を1円以上納めている。

 

どうでしょうか?これを見て、頭に具体的な内容があがり、それをクリアされていれば許可が取得できます。

具体的な内容がわからず、許可取得できるかよくわからないという方もいらっしゃるかと思います。

一般的には、産業廃棄物処理業の許可の許可をはじめ、多くの許認可取得の要件は、大まかに言うと、①人②物③お金の3つの項目に分類されます。

産業廃棄物処理業の許可においても各要件がこの3つに分類されますので、そのような視点で合わせて見ていくと理解しやすいかと思います。

ここでは、そうした視点を踏まえて、許可取得できるかよくわからないという方のために、新規許可取得をするために必要な要件をもう少し具体的に解説していきます。
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「人」の要件

要件① 「欠格要件」に該当していない

※「欠格要件とは何かについてや該当していたあるいは該当してしまった場合の影響」についての詳細はこちらの記事が参考になります。(ある意味これが一番重要な要件です)

対象者

「個人事業主」であればご本人、政令使用人(各営業拠点先の代表者)、「法人」であれば、法人自身はもちろん、その役員(監査役、顧問、相談役を含む)、持ち株比率5%以上の株主、政令使用人などの中にこの欠格要件に該当する人がいれば、新規許可取得はできません。

チェックしよう

□上記の対象者が「成年被後見人、被保佐人又は破産者で復権していない」
□上記の対象者が「過去5年間に禁固刑や罰金刑に処されたことがない」
□上記の対象者が「過去5年間に「廃棄物処理法」又は「浄化槽法」違反で許可取消処分の通知を受けた又は許可を取消されたことはない」

この①~③をクリアしていれば、欠格要件に該当しない可能性は高いです。

大雑把なチェックでしたので、具体的内容でチェックするには、以下で確認してください。

内容

以下がその欠格要件の内容です。この8つの内該当するものがないか確認して見てください。

☆全てを解説すると、ものすごく長い記事になってしまうので、それぞれを解説した投稿記事をリンクしておきましたので、気になる要件を見つけた方や詳しい内容を知りたい方は是非参考にして見てください。

 

1.成年被後見人、被保佐人又は破産者で復権を得ない人がいる

「成年被後見人、被保佐人又は破産者で復権を得ない人がいる」についての具体的な内容はこちらの記事が参考になります。

 

2.禁固刑以上の刑に処せられ、その執行を終わってから又は執行を受けることがなくなってから、5年を経過しない人がいる(※執行猶予も該当します)

「禁固刑以上の刑に処せられた場合」についての具体的な内容はこちらの記事が参考になります。

 

3.下記の一定の法律違反により、罰金に処せられ、その執行を終わってから、又は執行を受けることがなくなってから、5年を経過しない人がいる

「廃棄物処理法」「浄化槽法」「大気汚染防止法」「騒音規制法」「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」「水質汚濁防止法」「悪臭防止法」 「振動規制法」「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」「ダイオキシン類対策特別措置法」「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進 に関する特別措置法」

このような「環境関連法違反」に関わる時の具体的な内容はこちらの記事が参考になります。

 

4.下記の一定の法律違反により、罰金に処せられ、その執行を終わってから、又は執行を受けることがなくなってから、5年を経過しない人がいる

「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」「暴力行為等処罰ニ関スル法律」 「刑法第204 条(傷害罪)」「刑法第206 条(現場助勢罪)」「刑法第208 条(暴行罪)」「刑法第208 条の3(凶器準備集合及び結集罪)」「刑法第222 条(脅迫罪)」「刑法第247 条(背任罪)」

 

5.暴力団員又は暴力団員を辞めてから5年を経過していない者がいる

 

6.法人で、暴力団員がその事業活動を支配するもの

 

このような「暴力行為・暴力団」に関わる時の具体的な内容はこちらの記事が参考になります。

 

7.過去に許可を受けていたが、「廃棄物処理法」又は「浄化槽法」に違反したため、許可を取り消されてから5年を経過していない人がいる(法人の場合は、取消しの処分に関する行政手続法上の通知(聴聞手続)の日より、60日前以内に、その法人の役員等であった人がいて、その取消しの日から5年を経過していない時)

 

8.過去に許可を受けていたが、「廃棄物処理法」又は「浄化槽法」 の許可の取り消し処分の通知を受けてから、取消し処分を受けるまでの間に「廃業届(廃止届)」を提出し、それから5年を経過していない人がいる

 

「廃棄物処理法、浄化槽法の規定」により許可を取り消される時の具体的な内容はこちらの記事が参考になります。

 

要件②「講習会」の受講をし、修了証が手元にある

受講対象者

個人事業主の方であれば、「個人事業主本人」あるいは「事業所代表者」(各営業拠点先の代表者)が受講対象者に、法人の場合では「代表者」あるいは「役員」又は「事業所代表者」が受講対象者になります。

チェックしよう

□上記の受講対象者が指定講習会の受講をし、修了証が手元にある。

ここの要件はこれのみ満たせばクリアです。

講習会の受講をしよう!

欠格要件に該当しないことで無事に申請できることが確認が取れたら、次に産業廃棄物収集運搬業の指定「講習会」を受講します。

そして、最終日に行われる修了試験に合格することによって講習会修了証を取得しなければなりません。(申請時に講習会の修了証の原本あるいは写しの添付が必要になります)

なお、この講習会は、財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が統括し、各都道府県の産業廃棄物協会が行うものです。

予約をする

講習会の受講には予約が必要です。JWセンターHPなどで受講したい場所の講習会の日程・予約の空き状況を確認した後、各地域の産廃協会から受講の手引きを取り寄せ郵送申し込みするか、JWセンターHPで申込みできます。

講習会は日本全国どこの会場を受けてもよく、許可が必要な方が全国から集まってくるので、希望の会場が埋まってしまえば、そこで受講できるのが2ヶ月以上先ということもあります。

新規許可取得をお急ぎの方は、1日でも早く予約するようにしましょう。

日数・費用等

収集運搬業過程の講習会は「新規」の講習会と「更新」の講習会があります。(特別管理産業廃棄物のものも合わせると全部で4つ)

気になるのが、費用ですが、現在、「新規」は2 日間を要しその際の受講費用は30,400円。「更新」は、1 日で費用20,000 円かかります。

新規の講習は平日の午前9時頃から午後5時頃の時間帯で2日間、更新の講習は1日間拘束されることになります。受講できなければ許可取得できません。

受講日には何とかして受講対象者のスケジュールを空けておくようにしてください。

なお、JWセンターHPより申込むと500円引きで申し込めます。講習会の試験結果も早く確認できるのでこちらの方法はおすすめです。

 

講習会の申込・注意事項の概略についてはこちらの記事が参考になります。

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「物」の要件

要件③ 産業廃棄物の性状に応じた適正な処理」ができる「車両」「容器」「車庫」が準備できている

チェックしよう

□適正な処理ができる「車両」が準備できている。
□適正な処理ができる「容器」が準備できている。(ドラム缶など)
□車両の「車庫」が準備できている。

全て満たせば、ここでの要件もクリアになります。

「適正な処理」ができる車両の準備

当然ですが、産業廃棄物を収集運搬には、必ず「車両」が必要となります。

では、どんな車両なのかと言われると、結論からいえば、軽自動車から大型車両まで、どのような車両でも問題ない(乗用車やバイクなどの二輪車・原付でも運搬しようと思えばできます)ですし、1 台からの申請も可能です。

ただし、申請の際に提出する事業計画に矛盾があれば、「適正な処理」のできる車両とは言えず、許可は取得できません。

例えば、3ナンバーの普通乗用車で建設工事現場から排出される「がれき類」などを運びたいといっても、産業廃棄物の性状に応じた適正な処理のできる車両とは言えないでしょう。

一方、同様の普通乗用車でも、企業が廃棄する少量の使用済みボールペンなどの廃プラスチックを収集運搬するとなると、適正な処理のできる車両であると考えることができます。

また、廃酸・廃アルカリなどを収集運搬するには、それぞれの腐食性を考慮して耐腐食性のタンク車等を準備する必要があります。

このように、産業廃棄物の性状に応じて飛散・流出及び悪臭が発散するおそれのない車両が必要となります。

「適正な処理」ができる容器の準備

産業廃棄物の収集運搬は、飛散・流出及び悪臭が発散するおそれのない方法で行う必要があり、そのおそれのある産業廃棄物については、下表のような収集運搬に適した容器が必要となります。

【産業廃棄物の「適正な処理」ができる容器の例】

燃え殻 ドラム缶 フレコンバッグ 大型コンテナ
汚泥 ドラム缶 フレコンバッグ 大型コンテナ
廃油 ドラム缶 石油缶
廃酸 プラスチックドラム プラスチック容器
廃アルカリ プラスチックドラム プラスチック容器
廃プラスチック類 ドラム缶 フレコンバッグ 大型コンテナ
紙くず ドラム缶 フレコンバッグ 大型コンテナ
木くず ドラム缶 フレコンバッグ 大型コンテナ
繊維くず ドラム缶 フレコンバッグ 大型コンテナ
動植物性残さ ドラム缶 フレコンバッグ 大型コンテナ
ゴムくず ドラム缶 フレコンバッグ 大型コンテナ
金属くず ドラム缶 大型コンテナ
ガラスくず・陶磁器くず・コンクリートくず ドラム缶 フレコンバッグ 大型コンテナ
鉱さい ドラム缶 フレコンバッグ
がれき類 ドラム缶 フレコンバッグ 大型コンテナ
ばいじん ドラム缶 フレコンバッグ 大型コンテナ
感染性廃棄物 感染性廃棄物容器

ドライなもの(がれき類など)を収集運搬するには、容器などは使わず、車両の荷台にシートをかけるだけでも「適切な処理」と言えます。

しかし、ウェットなもの(汚泥や廃油)を取り扱う際には、ドラム缶などの容器で収集運搬するのが「適切な処理」であると言えます。

また、廃酸・廃アルカリなどを収集運搬する場合は、車両の場合と同様にそれぞれの腐食性を考慮して耐腐食性のプラスチックドラム プラスチック容器を準備する必要があります。

このように、収集運搬に適した容器が必要になることがあるので、必要な場合は確実に準備しましょう。

車両の車庫が準備できている

「適正な処理」をするための車両を準備しても、それを駐車できる場所がなければなりません。

違法駐車されないように、ちゃんと車両の駐車・保管場所(車庫)を確保しておくことが求められます。

要件④ 車両・車庫を「継続的に使用する権限」を有している

車両について

具体的には、申請者がその車両の「使用権限」があることが求められます。「使用権限」は、車検証で確認できれば車検証、車検証で確認できなければ使用承諾書又は賃貸借契約書の写しなどで申請者と「使用権限」を結びつけ証明します。

基本的に産廃収集運搬車両は、申請者と所有者あるいは使用者が一致していないといけません。一致してない場合は、賃貸借契約書や使用承諾書を作成する必要があります。

まず、車両の車検証の「使用者欄」に個人事業主の場合はそのご本人の名前が、法人の場合はその法人名が、入っていなければなりませんし、「使用者欄」が空欄の場合は、所有者が個人事業主ご本人の名前か法人名であることが必要です。

そのため、法人申請の場合で収集運搬車が社長個人名義であった場合は、法人名義への変更が必要です。

なお、「継続的に」という文言があるように、当然に、加えて車検証の有効期限内であることも必要です。

車庫について

また、車両の駐車・保管場所の使用権限を証明するために、一般的に、以下の書類が必要となります。

車庫が自己所有の場合は「土地の登記簿謄本」、賃借している場合は「賃貸借契約書のコピー」、タダで借りている場合(使用貸借)は「使用承諾書」などが必要になります。

この場合、賃借している場合やタダで借りている場合で、長期間借りている場合に相続などが絡んできて、実際の所有者がすぐにわからないということもあります。

所有者が誰でどこにこうした書類をもらいに行くのかがすぐにわかれば問題ないですが、そうでない場合はしっかり確認するようにしてください。

なお、「継続的に」に関して、各都道府県によって異なりますが、賃貸借の場合、概ね契約期間が一年以上とする所が多いようです。

この場合、契約期間が一年以上の賃貸借契約書のコピーなどで使用権限を証明します。

車検証上の所有者が申請者と一致しない場合はどうするか?

このような場合は、使用権限を証明するために賃貸借契約書や使用承諾書の提出が必要となります。貸借契約書・使用承諾書が必要となるかどうかは、車検証の所有者が誰なのかということで決まります。

車検証上の所有者がA(申請者)であれば申請者所有の車両となるので賃貸借契約書や使用承諾書の添付は必要ありません。

一方、車検証上の所有者がB(申請者以外)、使用者がA(申請者)の場合、Bが貸主、Aが借主の賃貸借契約書または使用承諾書を添付します。

また、法人の代表者の個人所有である車両を、申請者の法人が賃貸借し、使用する場合は法人代表者が借主、法人が借主の賃貸借契約書または使用承諾書を添付するか、法人名義への変更が必要です。

なお、申請者が法人の場合、所有者が法人、使用者が法人の代表者、使用人または役員の場合は賃貸借契約書や使用承諾書の添付は必要ありません。

「お金」の要件

要件④ 経理的基礎を有すること

□現在の事業において「過去3年間の損益平均がプラス」(マイナスでも、直前期がプラスなら許可の可能性あり)

□「自己資本比率が10%を超えている」(超えていなくても、債務超過になっていなければ許可の可能性あり)

□個人の場合は「所得税」、法人の場合は「法人税」の未納が過去3年間ない。

□直近の決算で上記の「所得税」「法人税」を1円以上納めている。全て満たせば、基本的には、ここでの要件もクリアです。

過去3年間の損益平均がプラス

現在の事業において「過去3年間の損益平均がプラス」とは、過去3年の損益計算書に経常利益が平均するとマイナスとなってしまっている場合などです。

この場合でも、「直前期が黒字になって、かつ、経営の改善の見込みがあるとき」は、追加書類を添付することで許可される可能性がありますので確認しておきましょう。

自己資本比率が10%を超えている

また、「自己資本比率が10%を超えている」とは、貸借対照表において、資産の中で返済不要のもの(純資産)が10%を超えている状況のことです。この値が原則10%以上であることが必要となります。

※「純資産」を式で表すと、純資産=(資産)-(流動負債+固定負債)です。
「自己資本比率(%)」は自己資本比率=(純資産)÷(総資本)×100とです。

実際に、計算して確認してみましょう。

また、自己資本比率が10%を超えていなくても、少なくとも債務超過、つまり資産に対して返済が必要な負債が上回っている状況でなく、かつ、持続的な経営の見込み又は経営の改善の見込みがあるときは、許可される余地があります。

つまり、純資産=(資産)-(流動負債+固定負債) という計算でマイナスが出たら債務超過ですが、マイナスでなければ許可取得の可能性があります。

※なお、法人で創業後3 年未満の場合は、直近3 年間の決算書を出せませんが、申請は可能ですので、各都道府県の手引き等で対応を検討しましょう。

「所得税」「法人税」の未納が過去3年間なし。直近の決算で1円以上の納税。

これらの要件は、個人事業主であれば、直近3 年間の所得税納税証明書(その1)を税務署で交付を受けます。法人であれば、法人税納税証明書(その1)を税務署で交付を受けます。

これらの納税を事業主として所得が無い場合、基本的に直近3年間の「源泉徴収票の写し」が代わりに必要となります

上記の「経理的基礎を有すること」の要件がクリアできない場合であっても、中小企業診断士等の作成する経営診断書や収支計画書を提出することで許可取得できる場合があります。

 

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